松井智司の「美」 その1 旅立ち

こんな膨大な可能性の中からたった一つだけを選び出して組み合わせ、あなたが楽しんでいらっしゃる松井ニットのマフラーのデザインができている。

——それにしても、ただ漫然と並べるわけではないでしょう?

「それは、次のシーズンにはこんな色が流行しそうだとか、来年はこんな年になりそうだから、どんな雰囲気に仕上げるか、などと考えたりはします。でも、最終的には並べてみないことには分からないんですよ」

——並べるときに注意することは?

「例えば、テーマにする色を一つ選びますよね。次に考えるのは、この隣にどんな色を持ってきたら合うだろうか、ということです。例えばブルーの隣を黄色にしようと思います。でも、黄色といったっていろいろあります。華やかな黄色がいいのか、くすんだような黄色にするか、それとも薄い黄色を組み合わせるか。並べながら考えるわけです」

——並べてみたところで、最終的には「これだ!」と決めなければなりません。その決め手になるのは何ですか?

「うーん」

と考え込んだ智司社長は、やがてこういった。

「甘いものを知らない人には甘い食べ物を作れないように、その人の感性にないものはいくら真似をしても作れないんです。決め手は私が幼い頃から身につけてきた感性、としか表現のしようがないですね」

智司社長が幼い頃から育んできた感性。松井ニットのデザインのルーツを知るには、智司社長の人生を辿らねばならない。

次回から、智司社長と一緒にタイムスリップの旅に出る。長い旅になるだろう。あなたにも旅のお供をお願いしたい。